泌尿器科
泌尿器科とは
当クリニックは、泌尿器科専門医が診療する病院として開業しました。泌尿器科は、泌尿器と呼ばれる尿の産生から排尿までの尿路に関係する臓器(腎臓や尿管、膀胱など)のすべてを診察します。また、泌尿器となると、対象となる臓器の形態が性別や年齢によってかなり異なりますが、当科は、男性・女性、あるいは成人か小児かといったことは問わずに泌尿器科診療を行います。
おしっこの悩みから男性不妊症まで
泌尿器科では、尿路結石症や排尿障害をはじめ、尿路感染症、小児泌尿器科、泌尿器科がんの診療を行います。具体的には、尿失禁や頻尿、排尿痛などのおしっこに関するお悩みをはじめ、腰・背部の痛みとして現れる尿路結石や女性に多い膀胱炎、さらに子どもの夜尿症、男性の前立腺肥大症や前立腺がん、ED(勃起不全)、男性不妊症のほか、性病などの疾患にも対応します。女性にも抵抗無く受診していただけるよう、なんでも話せる雰囲気づくりに努めている診療科ですので、おしっこの問題や骨盤臓器脱(性器脱)などについても、一人で悩んでおらずに、お気軽にご相談ください。
患者様に多く見受けられる症状・お悩み
- 尿が出にくい、出ない
- 尿に勢いが無い
- 尿に血が混じる
- おしっこが近い、回数が多い
- 夜間、何度もおしっこに起きる
- 尿が残っている感じがする
- 尿が漏れる
- 尿の我慢ができない
- 足がむくむ
- 腰や背中が痛む
- 腎臓の辺りが痛む
- 尿道から膿が出た
- (健診などで)血尿やたんぱく尿を指摘された など
男性に多い悩み
- 睾丸や陰嚢が腫れた
- 陰茎、陰嚢が痛む
- 陰茎、陰嚢がかゆい
- 亀頭、包皮に水疱やイボができた
- PSA(前立腺特異抗原)値が高いと言われた
- 男性更年期障害のような気がする
- 勃起力が低下した など
女性に多い悩み
- 尿が漏れる
- おしっこが近い、回数が多い
- 夜間、何度もおしっこに起きる
- 尿が残っている感じがする
- おしっこに血が混じる
- 腟から丸いものが脱出する
- 足がむくむ
- 腰や背中が痛む
- 腎臓の辺りが痛む
- 尿道から膿が出た
- (健診などで)血尿やたんぱく尿を指摘された
- 尿路(腎臓、尿管、膀胱)に結石がある など
泌尿器科で診る主な疾患
血尿・たんぱく尿
尿中に血液(赤血球)が漏れ出ている状態を血尿と言います。ただ、尿が赤くなくても血尿の場合があります。また、たんぱく尿は尿中にたんぱくが漏れ出ている状態です。通常、病気の無い方では尿中に血液やたんぱくが出ることはありません。そのため、血尿・たんぱく尿が出た場合は、腎臓などの泌尿器に何らかの疾患がある可能性が高いので、原因をつき止める必要があります。なお、血尿・たんぱく尿は尿検査(検尿)で診断できます。
前立腺肥大症
前立腺は膀胱の直下にあって、尿道を取り囲むように存在する男性特有の臓器です。ここでは前立腺液が分泌されるのですが、これは精子に栄養を与え、保護する役割を担っています。
この前立腺がおおきくなることで様々な症状が起きる状態を前立腺肥大症といいます。原因としては加齢が最も多いとされ、50代男性の2割、80代男性では8割の方に前立腺肥大症がみられるようになると言われています。加齢以外にも男性ホルモンや遺伝的要因も挙げられています。ちなみに通常の前立腺の大きさは、クルミ程度と言われますが、おおきくなると鶏の卵やみかんくらいまで大きくなります。
また前立腺の肥大によって尿道が圧迫を受けるようになると排尿に関する症状が見られるようになります。主な症状は排尿困難、頻尿(夜間頻尿)、尿意切迫感、残尿感といったもので、残尿量が増えると膀胱炎などの尿路感染症を発症しやすく、さらに進行すると溢流性尿失禁や尿閉(排尿したくても出せない)もみられ、これが腎機能を低下させることにもつながりますので早めの治療が望まれます。
診断をする際に行う検査は、尿流測定(尿の勢いや時間を調べる)や腹部超音波検査(前立腺の形や大きさや残尿の量を調べる)や前立腺の触診です。前立腺がんの有無を確認するための血液検査なども行います。
治療の基本は薬物療法でα1受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬が使用されます。薬物療法では改善が困難な場合は、前立腺の組織を尿道から内視鏡を挿入して削り取る電気メスによる経尿道的前立腺切除術やレーザーによる経尿道的レーザー前立腺切除術、尿道に筒状のコイルを入れて尿道を拡張する尿道ステント留置術などの手術療法を行います。
前立腺肥大症内視鏡手術(レーザーによる前立腺核出術 HoLEP) | 約80,000円 |
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前立腺肥大症に対する尿道ステント留置術 | 約100,000円 |
保険適用で3割負担の場合。
前立腺炎
前立腺に炎症が起きている状態が前立腺炎です。主な病態は2つあるとされ、そのひとつは前立腺が細菌(大腸菌が最も多い)に感染することで急激に発症する急性前立腺炎、もうひとつは同じく細菌の感染が関与している場合と、細菌以外の原因が関与している場合とがあるが、ゆっくりとした経過をたどる慢性前立腺炎です。
- 急性前立腺炎
- 前立腺が大腸菌やクラミジアといった細菌に感染することで発症します。主な症状は発熱、排尿時の痛み、排尿困難といったもので、前立腺に圧を加えると痛みが出るようにもなります。発症が疑われる場合は、直腸診、血液検査、尿検査(膿尿や細菌尿の有無)などによって診断をします。治療が必要な場合は、主に抗菌薬(ニューキノロン系 など)を投与します。
- 慢性前立腺炎
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慢性前立腺炎は、急性前立腺炎の治療期間が短かったことがきっかけとなって慢性化してしまうこともありますが、細菌とは関係なく炎症を起こす非細菌性の慢性骨盤痛症候群の場合もあります。なお後者のケースは急性・慢性問わず、前立腺炎の中でも患者数が最も多いと言われています。どちらが原因であったとしても急性前立腺炎のような強い症状が現れることはなく、会陰部の不快感や排尿時の違和感が現れる程度で、発熱がみられることはありません。検査所見では、これといった異常がみられないことも少なくありません。
なお非細菌性(慢性骨盤痛症候群)といわれる前立腺炎の原因については、検出されない細菌の関与や、骨盤底の筋肉の過緊張、ストレスなどの精神的要因が挙げられています。
治療に関しては、細菌性の場合は抗菌薬による治療となります。非細菌性では、原因によって、α1受容体拮抗薬や漢方薬や植物製剤や向精神薬による薬物療法、前立腺マッサージ、カウンセリングなどの精神療法などが行われます。
前立腺がん
前立腺に発生するがんのことで、前立腺組織の外側にあるとされる辺縁領域の部分で発生することが多いとされています(全体の7割ほどだと言われています。3割は前立腺組織の内側にある移行領域や中心領域で発生するとされています)。そのため、尿道を刺激することが少ないため初期症状は現れにくく、ある程度進行してから排尿困難や排尿時痛、血尿、残尿感などがみられますが、これらの症状は、前立腺肥大症などにもみられるので要注意です。さらにこのがんは骨、リンパ節に転移しやすいのも特徴で、それによる腰部や背部の痛み、骨折、脊髄の麻痺といった症状が現れることもあります。発生の原因については、加齢(50歳以上の男性は発生率が高い)、食生活(動物性脂肪の摂り過ぎ など)、遺伝といったことが挙げられています。
診断をする際は、血液検査(PSA検査)を行い、4ng/mLを超えた場合に精密検査を行います。直腸診で前立腺に硬いものに触れる、経直腸的超音波検査で低エコー像として腫瘤が確認できるという場合に確定診断として、経直腸的超音波ガイド下生検によって診断を確定します。このほか、前立腺がんの範囲や進行度合を調べるため、画像検査としてCTやMRIも行います。
(前立腺肥大症の内服薬を服用している方はPSAの数値が低下することがあるため、数値の判断は医師にお尋ねください。)
治療に関しては、がんの進行度によって異なりますが、限局性前立腺がんの場合は、前立腺の全摘除術や放射線療法などを行います(リスクが低い場合は監視療法)。また局所進行性の前立腺がんであれば、ホルモン療法と放射線療法を組み合わせた治療などが行われます。
尿路感染症
尿路とは尿が作られて排出するまでの経路のことを言い、腎臓、尿管、膀胱(男性の場合は前立腺)、尿道がこれに当たるわけですが、これらの器官で起きた感染症のことを尿路感染症と言います。また尿路感染症は、急性か慢性か、基礎疾患がない場合(単純性尿路感染症)とある場合(複雑性尿路感染症)に分けられます。
単純性尿路感染症は女性に発症しやすいと言われています。女性は尿道が短いため、大腸菌などの細菌が尿道から侵入しやすくこれが内部に定着することで発症します。急性単純性腎盂腎炎ですと発熱や腰痛、急性単純性膀胱炎ですと排尿時痛や残尿感などの症状が見られるようになります。
膀胱炎
膀胱に何らかの原因で細菌感染を起こし、炎症が起きている状態を膀胱炎と言います。この場合、急性と慢性があって、さらに基礎疾患の有無によって単純性(基礎疾患なし)、複雑性に分けられます。
最もよくみられる膀胱炎が急性単純性膀胱炎で、一般的にはこれが膀胱炎を意味していることが多いです。若い女性が発症しやすく、原因は大腸菌(細菌)の尿道からの感染によるものが大半です(細菌以外では、薬剤、カテーテル、ウイルス など)。女性は構造的に尿道が短いことから大腸菌などの細菌が侵入しやすく、疲労やストレスによる免疫力の低下、性行為などが引き金となって起きやすくなるとも言われています。主な症状は、頻尿、排尿痛、膿尿(尿混濁)といったもので、下腹部痛や残尿感などが現れることもあります。なお発熱はみられませんが、上記の症状と共に高熱がある場合は腎盂腎炎が疑われますので要注意です。
診断を行う際は尿検査を行い、尿中の白血球の数や細菌を調べることで診断をします。治療が必要な場合は抗菌薬(セフェム系やニューキノロン系 など)を投与します。このほか、水分をよく摂取して、病原体を尿と一緒に排出することも大切です。
腎盂腎炎、複雑性尿路感染症
腎盂腎炎は尿路感染症のひとつで、腎盂(尿を集めて尿管へと送る部位)や腎実質に細菌感染が及んでいる状態を言います。
発症のメカニズムとしては、尿道の出口から細菌(主に大腸菌)が何らかの原因で入り込んで膀胱から尿管をさかのぼって、腎盂に達して、感染することで発症します。なお、腎盂腎炎は基礎疾患のない方が発症する急性単純性腎盂腎炎と、基礎疾患のある方に起きやすいとされる複雑性腎盂腎炎に分類されます。
- 急性単純性腎盂腎炎とは
- これといった基礎疾患のない方に発症しやすく、若い世代の女性によく見られます。尿道からの細菌(主に大腸菌)感染によって発症しますが、膀胱炎症状がみられた後、腎盂に感染することで、発熱、腰背部の痛み、寒気やふるえ(悪寒)といった症状が現れます。同疾患が疑われる場合は、血液検査や尿検査によって炎症の程度や細菌の有無などを調べることで診断を行います。治療は、主に抗菌薬(セフェム系、ニューキノロン系 など)を使用します。
- 複雑性腎盂腎炎とは
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尿路に何らかの基礎疾患(尿路結石、尿路カテーテル留置、前立腺肥大症、腫瘍、尿路奇形 など)のある方が発症する腎盂腎炎が複雑性腎盂腎炎です。主に高齢者や小児に発症することが多いです(男女差はない)。原因菌は、大腸菌だけでなく、緑膿菌、腸球菌などいろいろで複数の菌に感染することもあります。主な症状ですが、無症状なこともあれば、腰や背中に軽度な痛みなどが出ることもあります。いずれにしても慢性に経過するので慢性複雑性腎盂腎炎とも呼ばれ、続けばやがて腎機能が低下、それによって腎臓が萎縮していくこともあります。なお、慢性の経過中に急性発症(尿路に結石が詰まる など)が起き、急性単純性腎盂腎炎のような症状が出ることもあります。
尿検査や尿路の基礎疾患を調べるための超音波検査やCTなどで検査を行います。治療は、急性症状が強く出ているのであれば抗菌薬を使用しますが、そうでない場合は原因となる基礎疾患の治療を行います。
- 複雑性尿路感染症とは
- 複雑性尿路感染症は、何らかの基礎疾患が尿路にある方で、尿路感染を発症する疾患です。なお基礎疾患とは、前立腺肥大症、前立腺がん、膀胱がん、腎盂尿管がん、尿路結石、神経因性膀胱といったもので、小児でも膀胱尿管逆流や尿路奇形によって発症することがありますので、年代や性別といったものは関係なく発症します。なお複雑性尿路感染症の場合、慢性的な経過をたどりやすく、症状は軽度か無症状といったこともありますが、急性症状が現れることもあります。よく見られる疾患には、慢性複雑性腎盂腎炎、慢性複雑性膀胱炎などがあります。なお上記で挙げた疾患を防ぐには、基礎疾患をしっかり治療することも大切です。
精巣上体炎
精巣(睾丸)の脇に位置する精巣上体に細菌が感染し、炎症を起こす疾患が精巣上体炎です。尿中の細菌が尿路から精子の通り道を通って精巣上体に入り込んで感染をします。若い世代では性感染症のひとつであるクラミジア・トラコマティスが、中高年世代の場合は大腸菌などの一般的な細菌が原因となって感染し、発症することがあります。主な症状は発熱、陰嚢の有痛性腫脹ですが、精巣捻転症(睾丸がねじれて、血液が届かなくなり壊死する病気)とも似た症状があることからしっかり鑑別する必要があります。
診断は、尿検査で尿中の細菌を確認する、超音波検査で陰嚢を調べるなどします。治療は、抗菌薬(ニューキノロン系、セフェム系 など)による薬物療法を行います。また症状が強く出ている場合は、NSAIDsなどの痛み止めも使用します。
尿路結石症
結石が存在する場所によって病名が異なります。結石が腎臓内にあれば腎結石、尿管内にあれば尿管結石、これらは上部尿路結石とも呼ばれます。また膀胱内にあれば膀胱結石、尿道あると尿道結石と呼ばれ、これらは下部尿路結石とも呼ばれます。ちなみに全尿路結石患者の95%以上が上部尿路結石です。結石は、リン酸やシュウ酸、尿酸などの成分があります。30~50代の男性に発症しやすいのも特徴です。
よく見られる症状ですが、腎結石では症状はほぼありません。尿管結石の場合は、尿管で結石が詰まることで背部や腰部から下腹部にかけて激しい痛みに襲われるほか、血尿がみられることもあります。また下部尿路結石では、血尿をはじめ、排尿時痛や排尿障害などの症状が見られます。診断は、尿検査や画像検査(超音波検査、CT など)によって行います。
治療は、痛みの症状がある場合は、NSAIDsや抗コリン薬を用います。また、結石が小さな場合は自然に排出するようにします。具体的には内服薬や水分を多く摂ることで尿量を増やして石を出すことを行います。クエン酸製剤を使用するなどの結石溶解療法は早期の治療効果はないことが多いです。なお10mm以上の結石の場合や、それ以下の大きさの結石でも排出が難しい場合は、積極的に結石を除去します(積極的除去法)。上部尿路結石では、外部から結石に向けて衝撃波を当てることで破砕する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、尿道から内視鏡を入れて尿管の結石を砕く経尿道的結石破砕術(TUL)を行います。また、2cm以上の大きな腎結石は経皮的腎砕石術(PNL)を行います。下部尿路結石ではESWLは困難なため、経尿道的結石破砕術(TUL)を行います。
尿管結石に対する内視鏡手術 (レーザーによる破砕および摘出術 TUL) |
約100,000円 |
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保険適用で3割負担の場合。
体外衝撃波による尿路結石破砕術(ESWL) | 80,000円(税込) |
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自費診療となります。
腎機能障害・腎不全
腎不全とは、腎機能が障害を受けて、血液から老廃物を取り除く機能などが低下している状態を言います。なお腎不全は、急性腎不全と慢性腎臓病などがあります。
- 急性腎不全とは
- 急性腎不全は、急激に腎臓の機能低下を起こす病気です。脱水や大量出血、心不全などによって腎臓の血液量の低下によって起こる腎前性腎不全、急性尿細管壊死など腎臓そのものの障害によって起きる腎性腎不全、尿路結石や前立腺肥大症や前立腺がんなどによる尿路閉塞などによって引き起こされる腎後性腎不全があります。主な症状は、乏尿です。これは1日の尿量が400mlより少ない状態を言います。そのほか、全身のむくみ、倦怠感、嘔吐・吐き気などがみられるようになります。腎臓のサイズ自体は正常からやや大きめになることが多く、発症の原因を取り除くことができれば、回復することもあります。血液検査や画像検査(腹部超音波検査、CT、MRI など)によって診断を行います。治療は原因とされる疾患の治療や原因とされる薬物の除去を行います。
- 慢性腎臓病とは
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慢性腎臓病は、腎臓の機能が低下した状態で、3ヵ月以上持続している場合を言います。主な原因としては、糖尿病、腎盂腎炎、高血圧、尿路結石、各種の腎炎といった病気が引き金となります。主な症状は、たんぱく尿、血尿、多尿(夜間多尿)、高血圧、体のむくみ、だるさ、食欲の低下などで、これらの症状があれば慢性腎臓病が疑われます。病状が進行すると透析が必要となるほか、不可逆性のため元に戻ることはありません。そのため、早めの発見、治療が望まれます。
診断のためには、尿検査、血液検査をはじめ、腹部超音波検査、CT、MRIなども行います。
治療は、症状の進行度によって異なります。ステージ1~5に分けられ、1は正常ですので治療は不要ですが、2の場合は、生活習慣を改善する必要があります。食事療法で適正な水分やエネルギーの摂取、肥満の改善、塩分の摂取量を1日6g未満にするなどします。これでも改善しない場合は薬物療法も併せて行います。ステージ3は、腎臓の病気に詳しい医師による治療が必要です。上記の生活習慣の改善や薬物療法のほか、原因疾患の治療をしっかり行います。末期腎不全にならないための予防も必要で、さらにカリウムの摂取にも注意します。ステージ4は腎機能が30%以下にまで低下した状態です。現状維持を目的に透析治療の開始をできるだけ遅らせることが目的となります。そのため、かなり厳格な食事療法などを行います。ステージ5は尿毒症の症状が現れている状態です。こうなると透析療法か腎臓移植が必要となります。
腎臓がん
腎がんまたは腎細胞がんとも呼ばれ、尿をつくる腎実質の細胞ががん化して発症します。なお腎盂の細胞もがん化することもあるのですが、この場合は腎盂がんと言います。50~60代の男性に発生しやすいとされ、高齢になればなるほど発症するリスクは高くなります。
主な症状ですが、発症初期はほとんど症状はありません。それだけに健康診断などで偶然がんが発見されたということも少なくありません。またある程度まで進行すると発熱、体重の減少、倦怠感、貧血などが見られるほか、血尿、腰や背中の痛み、腹部の腫瘤(しこり)などが現れることもあります。
また、肥満や喫煙、高血圧、遺伝子が原因とされる病気(フォン・ヒッペル・リンドウ病 など)、透析などがリスク要因だとされています。
腎臓がんが疑われる場合、血液検査、画像検査(CT、腹部超音波検査、MRI)などで精密検査を行います。
治療は、外科的切除による効果が高いとされていることから遠隔転移がないことが確認されれば、手術療法が行われます。この場合、悪性腫瘍のある腎臓を全て切除する根治的腎摘除術、小さい腫瘤(4cm以下)であれば、腎の一部を切除する腎部分切除術が行われます。また手術による摘出が困難な場合は、薬物療法(分子標的治療薬、免疫療法)などが行われます。
膀胱がん
膀胱の粘膜に発生するがんです。高齢男性に発症するケースが多く、9割以上が50歳以上と言われています(男女比は4:1)。初期症状で、これといった痛みはないのに血尿が現れます(無症候性肉眼的血尿)。このほか、頻尿や排尿時の痛みなどもみられることがあります。また、病状が進行すると体重減少、転移や浸潤による全身症状、尿路閉塞なども出ることがあります。
発症のリスク要因は喫煙、膀胱結石や神経因性膀胱による慢性的な炎症、職業性発がん物質(ナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニル など)への曝露、放射線治療での膀胱への被爆、シクロフォスファミドやフェナセチンといった医薬品の使用などが挙げられています。
訴えや症状などから膀胱がんが疑われる場合、尿細胞診、腹部超音波検査、膀胱鏡検査、CTなどによって診断を行います。
治療は、まず経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を行い、組織を採取し、切除します。筋層非浸潤性がんである場合は、TUR-Btでの切除のみで対応できることもありますが、再発する可能性が高い場合は再発予防として、抗がん薬やBCGによる膀胱内注入療法を行うこともあります。筋層浸潤性がんであれば、膀胱全摘除術と骨盤内のリンパ節郭清術(骨盤内のリンパ節の摘出)、それと腎臓で作られた尿を体外へ排出するための尿路変向術を組み合わせた手術を行います。なお進行がんの場合は、化学療法や放射線療法が行われることもあります。
膀胱腫瘍に対する内視鏡切除術(TUR-Bt) | 約50,000円 |
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保険適用で3割負担の場合。
精巣がん
精巣に発生する腫瘍(ほとんどが胚細胞腫瘍)のことで、その大半は悪性です。若い世代の男性に発症しやすいのが特徴ですが、発症の割合は10万人に1人程度と言われています。主な症状は、痛みがみられない精巣の腫大です。病状が進行すると他の部位(リンパ節、肺、肝臓 など)に転移するようになるのですが、その際の症状(リンパ節が腫れる など)で気づくこともあります。なお治療を適切に行うことができれば、多くの症例で根治が望めるようになってきました。
なお発症の原因は現時点ではわかっていませんが、リスク因子として停留精巣(乳幼児にみられる先天異常で精巣が陰嚢に到達していない)、家族に精巣がんに罹患している方がいるといったことが言われています。
精巣がんが疑われる場合、超音波検査、CT検査、血液検査での腫瘍マーカーの確認を行います。
精巣がんの可能性が高い場合は、高位精巣摘除術を行います。これは転移が確認されても行います。これによって腫大した精巣を取り除き、摘出した精巣から腫瘍の種類や進行の程度などを確認し、治療方針を決定します。精巣腫瘍の大半は悪性の胚細胞腫瘍ですが、これはセミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマ(胎児性がん、卵黄嚢腫瘍 など)に分けられます。進行度合によってセミノーマでは、経過観察、放射線療法、化学療法などが、非セミノーマでは、経過観察、化学療法、後腹膜リンパ節郭清などが行われます。遠隔転移がある場合は、どちらも化学療法を行います。
男性更年期障害(LOH)
男性更年期障害は、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こり、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも呼ばれます。主な症状としては、動悸、頭痛、発汗、ほてり、のぼせ、手足の痺れ、倦怠感、無気力、不眠、うつ、勃起障害をはじめとする性機能障害など、多様に現れてきます。
こうした男性更年期障害の診断は、主に問診と血液検査(テストステロン濃度の測定)で行います。治療法としては、減少した男性ホルモンを注射で補充する「男性ホルモン補充療法」(※保険適用にならないケースもあります)が一般的です。また、精神的なストレスが大きく影響しているような場合には、ストレスに対抗するための薬が処方されることもあります。
診療費用
初診料 | 3,000円(税込) |
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検査料 | 7,000円(税込) |
再診料 | 1,000円(税込) |
注射(月1回) | 2,500円(税込) |
自費診療となります。
検査は3か月に1度おこないます。
間質性膀胱炎(膀胱部痛症候群)
間質性膀胱炎(膀胱部痛症候群)は、昼夜を問わず尿の回数が多くなったり、我慢できないほどの尿意切迫感を覚えたり、尿が溜まったときに膀胱に強い痛みが走ったりします。原因は明らかにはなっていませんが、熟成チーズ、大豆、赤ワイン、柑橘類や炭酸飲料など酸性が強いもの、わさびや唐辛子、こしょうなどの香辛料、コーヒーなどカフェインの多く含まれているものを食べた後に痛みが強くなったりすることがあるため、尿中に排出される物質の関与が示唆されます。間質性膀胱炎の治療では、完治を目指すのではなく、症状の緩和、消失を目標に置き、水圧療法(萎縮した膀胱を水圧で拡張する治療)や薬物療法、膀胱訓練など、いくつかの方法を組み合わせて行います。
過活動膀胱(OAB)
過活動膀胱は、尿意切迫感(尿意を突然感じて、我慢できなくなる)とそれによって引き起こされる失禁(切迫性尿失禁)、頻尿といった症状が現れるのが特徴です。本人の意志とは関係なく、膀胱の筋肉が収縮することで起きるようになります。
発症の原因は、脳血管障害や脊髄損傷など神経系の病気によって、脳からの命令がうまく伝わらないことで起こる神経因性膀胱などによるもののほか、非神経因性として加齢や精神的ストレス、女性であれば閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少や骨盤臓器脱による膀胱の機能的変化、男性であれば前立腺肥大症などによって、膀胱の尿量を感知するセンサーが過敏になることで発症することもあります。
治療は、原因となる疾患がある場合は、その治療が優先されます。また過活動膀胱の治療は、抗コリン薬やβ3作動薬による薬物療法を行います。また行動療法も組み合わせることで、より治療を効果的にすることができます。行動療法とは、膀胱訓練(尿意があっても排尿を我慢し、膀胱の尿量を増やしていく)、生活習慣の改善(偏食・過食を改める、バランスがとれた食事、体重を減少させる、禁煙 など)、理学療法(骨盤底筋訓練 など)です。
なおこれらの薬物療法、行動療法で十分な効果が得られない場合は、ボトックス膀胱壁内注入治療を検討します。
ボトックス膀胱壁内注入治療腹圧性尿失禁
くしゃみや咳、大笑い、運動、重い物を持ち上げた時にお腹の圧力が高くなり、尿が漏れてしまう状態を腹圧性尿失禁と言います。これは女性によく発症しやすいとされ、主に加齢や出産(とくに多産)によって、尿道を閉鎖する機能が低下したり(尿道括約筋などが弱まる)、骨盤底筋群が弱まり、尿道や膀胱が下垂することで発症すると言われています。なお女性患者が多い理由としては、男性よりも筋力(骨盤底筋)が弱く、尿道が短いためと言われています。
診断は、腹部超音波検査や尿検査、パッドテスト(パッドを着けて運動をし、尿漏れの有無を調べる)や鎖膀胱造影検査などで行います。
治療は、進行の程度によって保存療法あるいは手術療法を選択します。保存療法とは骨盤底筋訓練というものです。これは、筋力が弱くなっている骨盤底筋を鍛えるもので、具体的には尿道、膣、肛門の括約筋といった骨盤底筋群の収縮と弛緩を繰り返すという運動です。これは軽症の患者様に有効とされています。また、尿道閉鎖圧の低下を改善させる治療として、β刺激薬などの薬物療法を行うこともあります。
上記の治療だけでは改善が困難な場合は、尿道をメッシュ状のテープで支える、尿道スリング手術が行われます。TVT手術やTOT手術などという手術があります。これによって尿失禁が抑えられるようになりますが、術後に排尿困難が起きることもあります。
骨盤臓器脱
骨盤臓器脱は高齢者や経膣出産経験者によく見られ、骨盤底にある臓器(膀胱、子宮、直腸 など)が本来の位置よりも下がってしまい膣からはみ出している状態を言います。子宮が膣より飛び出していると子宮脱、膀胱が膣壁ごと骨盤外へ出ているのであれば膀胱瘤、直腸が飛び出している場合は直腸瘤と診断します。
原因は、分娩によって骨盤を支える靭帯が損傷を受ける、閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下によって引き起こされる骨盤底筋の弛緩が挙げられています。
また骨盤臓器脱によって、よく見られる症状は、性器の下垂感や脱出感、下腹部の違和感、膣の粘膜からの出血といったものですが、膀胱瘤も併発していると頻尿や尿失禁、時には排尿困難も見られます。脱出した臓器(粘膜)の部分に炎症やただれを起こし、出血することもあります。
治療は症状の程度によって異なります。軽度~中度という場合は、保存的な治療となります。具体的には、POP-Q法のステージ1と診断された場合は、骨盤底筋訓練によって骨盤底筋を強化することで臓器脱を抑えるようにします。またステージ2以上と診断された場合は、ペッサリーと呼ばれる硬質プラスチック製のリングを膣の中に挿入して子宮などの臓器の下垂を防ぐようにしますが、これは根治を目的とした治療法ではありませんので、さらに症状が進行してペッサリーが脱出して抑えが効かなくなってしまうこともあります。
なお、骨盤臓器脱による症状がある方でPOP-Q法のステージ2以上と診断された方については手術療法を選択することもあります。手術療法としては、子宮を摘出して骨盤底を縫合する手術や膣と直腸間にメッシュを留置して膀胱や膣などの臓器を支える手術が行われます。
性感染症(STD)
性感染症とは、性的な行為によって感染する病気の総称です。性的な行為には、性交だけでなく、オーラルセックスなどの広い範囲の性行為(粘膜接触)を含みます。性病の多くは、血液や精液、腟分泌液などの体液によって感染していきます。
以前は性風俗店などにおける不衛生な性行為による感染が多かったのですが、最近は、不特定のセックスパートナーとの性交渉や性の多様化などにより、ごく一般に広まっています。
逆に、風邪のように喉が痛い(咽頭炎)などの症状で性感染症が発見されるケースも見られるようになり、病態は複雑化しています。
代表的な性感染症は、淋病、クラミジア感染症(非淋菌性尿道炎)、梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、カンジダによる包皮炎、毛ジラミ症、エイズなどです。思い当たる節のある方や、パートナーが性感染症にかかっている方は、早めに専門医による検査、および適切な治療を受けましょう。それが、早期治癒への大切な第一歩です。
性感染症が疑われる症状
- 性器に「腫れ」が見られる
- 性器がヒリヒリする
- 性器にブツブツが生じた
- 性器から膿のような粘液が出る
- 下着に見慣れない汚れが付着するようになった
- おしっこをする時に痛みや違和感が伴う
- 性器周辺に痒みがある
- おりものの量が増えた
- 性器の痒みがある
- 性器のにおいが気になる
- 外陰部に痛みがある など